カバンから出てきたアンドーナツ。

私はスーパーの食品レジでパートをしている。

それはもう毎日、いろ〜んな人がやって来る。

今日もこんなことがあった。

お会計が終わったおばあちゃん。

サッカー台で袋詰めしていた、っと思ったら、トコトコっと私のレジに戻ってきた。

もちろんレジにはお客さんの列ができていて、私は次のお客さんのお会計の途中である。

「オネエさん。これさ、」と言って4個入りのあんドーナツを見せる。

「アタシのカバンの中から出てきたんだけどさ、お会計済んでるかねえ?」

あんドーナツを見た私は、これはレジ登録した覚えがないぞ〜、と思ったけど、

「お客様、先程のレシートで確認してみましょう」と言ってレシートと照らし合わせてみる。

「ああ、お客様、こちらはまだお会計が済んでいないですねえ。」と言うと、

「そうかい、アタシのカバンの中に入っていたんだよ。おかしいねえ。じゃあ、お金払うから、いくらだい?」とおばあちゃん。

並んでお待ちのお客さんの視線を背中にビシバシ感じながら、おばあちゃんに、

「お客様、みなさんお並びになっていらっしゃるので、申し訳ないのですが後ろにお並びいただけますか?」

すると、トコトコ列に向かったので、私は「お待たせしてすみません」と中断していたレジ登録を再開。

そして、ふと横を見ると、今、レジ登録中のお客様の隣におばあちゃんが並んでいる。

え???4、5人は後ろに並んでいたはずだよお???なぜに2番目に並んでる???

「お客様、みなさん、並んでお待ちなので、一番後ろに並んでいただけますか?」と私が言うや否や、おばあちゃん、「この人が良いって言ったのよ〜」と後ろの男性を指さした。

「え?!」と思って後ろの男性を見ると同じく「え?!」という顔。

誰も文句を言わないものだから、強引に割り込むおばあちゃん。

仕方ないから、さっさと済ませようとあんドーナツをピッとスキャン。

すると、ブーっと「バーコード登録なし」の警告音が鳴った。

まじか〜。

時々、売り場で未登録の商品があったりするのだ。

しかし、よくそのあんドーナツを見てみると、なんだか見たことのない商品のような気もするけど、ん?新商品?

売り場に確認の電話をしてみる。

バーコードを読み上げると案の定、「うちでは取り扱っていないね」との返事。

うへ〜、いったいどこの商品だ?

「お客様、これはうちの店の商品ではないようです。モールのテナントの百均とか、無印とかでしょうか?」と言うと、「アタシはそんなとこには行っていない」ときた。

「でも、ここではお会計ができないので・・・」

とすったもんだしているうちに、

「ああ、ここへ来る前にローソンに行ったよ。そこで買ったんだった!」

スッキリ解決したおばあちゃん、「ありがとね」と手を振りながら帰っていった。

でも、アタシは平謝りで次のお客さんのレジをする羽目になったんだよ。

まあ、怒り出すお客さんがいなくて不幸中の幸だったけどさ。

こんな調子で、案外レジ仕事は波乱に富んでいるのだよ。

なかなか、面白いといえば面白いので、15年も続いちゃったんだわね。

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